色調調整を極める:RGB リフォーム②

3. 調整の実際(風景撮影のRGB リフォーム)

調整の方向性は見えてきたが、決してこれらの水色や緑、赤の色相彩度をバラバラに操作する訳ではない。
そんなことをしても、例えば空の淡い部分より元々青系の(空よりは)濃い部分に激しく作用してしまうし、各色の色相彩度やカラーバランスなどのコマンドがデータを何重にも引っ張り合って、調整上も指標が付かないし、データ上も大きく破綻してしまい、“ ぬり絵” のような結果になりかねない。
色と明るさの調整の基本はやはりトーンカーブで、RGB のそれぞれの組成を無理のない形で穏やかに調整していくのが王道だ。各チャンネルの割合をわずかに変えていくことで、かなりの変化が得られるし、無理のない自然さを保ったまま調整が行えるのだ。
だが今回の画像では、例えば明るい空の領域とかなりアンダーな水面の領域は当然調整のやり方が変わってくる。それらの領域は比較的簡単に抽出できるので、それぞれの簡単なレイヤーマスク、及びそれ以外の中間的な建物や道路などの三つの領域ごとに分けて、別々にトーンカーブ調整を行うことにした。

①空の再現(次頁上図)
まず空の再現だ。一面の「高曇り」の状態で、ほとんど空色の無い状態だが、幸い極端な白トビもなく僅かならもトーンが残っている状態だ。この空がなるべく明るさを保ったまま、空のトーンの変化を最大限に引き出したい。
具体的にはR のチャンネルをリニアで若干下げ、反対にB チャンネルは若干上げる。これによりほのかな空のトーンが引き出せるがG チャンネルは変えていない。(変えれば空の明るさと色味が変化する)
マスターチャンネルで空とは関係ない中央部の明度が上がっているが、これは簡易なマスクの為、境界線にあたる建物等のエッヂの明るさを出すためだ。(=陽が当たって明るく感じる)


①空の再現:一面の「高曇り」の状態で、ほとんど空色の無い状態だが、幸い極端な白トビもなく僅かならもトーンが残っていた。この空がなるべく明るさを保ったまま、空のトーンの変化を最大限に引き出すために、R のチャンネルをリニアで若干下げ、反対にB チャンネルは若干上げる。これによりほのかな空のトーンが引き出せる。マスターチャンネルで空とは関係ない中央部の明度が上がっているが、これは簡易なマスクの為、境界線にあたる建物等のエッヂの明るさを出すためだ。(=日当たり効果)


②水色の演出:赤茶っぽく濁りが目立つので、マスターチャンネルで明部を少しだけ持ち上げた後、R チャンネルをやや下げるが、ここではリニアでなく濁りの中心となるやや暗部の領域を中心になだらかに下げる。B チャンネルは持ち上げるが、こちらもリニアでなく、R と同等の領域の操作だ。このように最も濁りの中心となる明度のポイントを出来るだけなだらかに操作することが、自然な諧調操作のポイントだ。

続いて本画像の大きなウェイトを占める水の再現だ。デフォルトでは赤茶っぽく濁りが目立つので、何とか明るさや透明感を感じる範囲に持っていきたい。
ここではマスターチャンネルで明部を少しだけ持ち上げた後、R チャンネルをやや下げるが、ここではリニアでなく濁りの中心となるやや暗部の領域を中心になだらかに下げる。B チャンネルは持ち上げるが、こちらもリニアでなく、R と同等の領域の操作だ。このように最も濁りの中心となる明度のポイントを出来るだけなだらかに操作することが、自然な諧調操作のポイントだ。
(注:空の領域ではかなり白っぽくカーブの上端に近いので操作できず、やむなくリニアでカーブを操作した)

 

③全体の明度のマッチング

続いて本画像の大きなウェイトを占める水の再現だ。
これまでの①、②の操作で、画面を構成する主要素である空と水の再現は出来た。しかしまだなんとなく画面全体の階調が不自然で、全体としての写真の明るさも表現出来ていない。
ここではその空と水をつなぐ建物や道路の領域をコントロールすることによって、バラバラに調整した主要素とのマッチングを図ることにする。
撮影角度により、建物や道路はやや日陰部分が多く、やや暗く重苦しい印象が強いので、まずマスターチャンネルで、これまでよりは大胆にガンマカーブの持ち上げを行う。この時画面全体の締まりがなくなって薄っぺらくなるのを防ぐため、ややアンダー部分にはアンカーポイントを打ち、結果としてなだらかなS 字カーブとなる。やや重苦しかった建物や道路の印象が軽快になった印象だ。コントラストが上がり、「日差し」が強くなって、「天気がよくなった」感じが演出できた。
隠し味として、ほんの少しアンダー部のB 味を下げている。これは日陰の冷たさを防ぐとともに建物の発色も上げているが、この時R を上げるのではなくB を下げていることに注目。積極的に華やかさを演出するにはR を上げる方が効果的だが、風景写真としては派手さが目立つことにもなる。ここではB を下げることによって、不要な彩度を上げすぎない、自然な上がりを目指した。

以上のように(領域別ではあるが)トーンカーブの比較的穏やかな操作のみで、かなり撮影時の欠点を除いて表現主題に対して効果的な補正ができた。あれこれ特殊なコマンドをバラバラに使うより、トーンカーブの穏やかな操作を重ねることにより、調和のとれた画像の補正が可能だ。今回は8bit の作業だったが、もちろん同様の作業を16bit で行えば、画像データの破綻も最低限に抑えられる筈だ。