ピクチャースタイルを使いこなす

「ピクチャースタイルを使いこなす」
動画の場合、静止画に比べ1 ショットあたり膨大なデータ量になるため、後作業の効率化のためにも撮影時に画質を追い込んでいくことが重要です。
今回は、SONY のビデオカメラ及びαシリーズ搭載のピクチャースタイル、及びNikon 一眼レフ搭載のピクチャーコントロールの設定とその活用法についてみていきます。

1. グレーディングソフト、ノンリニア編集ソフトによる映像加工との違い

ピクチャープロファイルを用いると、映像の色や鮮明さを撮影時に調整することができるが、グレーディングソフトウェアやノンリニア編集ソフトウェアでも撮影後の編集時に似た作業が可能ではある。では、それらのソフトウェアとピクチャープロファイルの違いは何だろうか?

カメラは、膨大な映像情報を限られたメモリーに記録するために、撮影した映像を圧縮して記録する。どのようにすぐれた圧縮フォーマットであっても、圧縮処理を行うと映像は少なからず劣化してしまう。撮影済みの映像素材に対して、シャープネスやガンマカーブの補正などのビデオエフェクトを適用する場合、劣化した映像に対して加工処理を施すことになり、さらに状態が悪くなってしまうことになる。たとえば、圧縮によって階調が不足した部分や圧縮によるブロックノイズが撮影済みの映像にあると、その部分がさらに目立ってしまうこともあるのだ。

一方、ピクチャープロファイルは撮影時点での処理であるため、圧縮前の信号を処理している。そのため、上記のような劣化がない状態の映像に対してガンマカーブの変更やカラーコレクションを行うことが出来る。被写体の質感を保ったまま、精度の高い映像調整が行えるという訳だ。
また、撮影時に暗部や高輝度部の階調を適切に調整して記録していないと、撮影後の加工で映像のコントラストを変更しようとしてもうまくいかないことも多い。
グレーディングソフトウェアやノンリニア編集ソフトウェアは高機能とは言え、万能ではない。撮影時にできるだけ理想の映像になるように、ピクチャープロファイルを使って各種設定を調整しておけば、グレーディングソフトウェアやノンリニア編集ソフトウェアでの調整も最小限になり、よりイメージに近い映像を作ることが出来るのだ。

ピクチャープロファイルの活用法

撮影後の加工に充分な時間が取れる作品や完成尺が短い作品では、色調整などのあらゆる後処理を想定し、できるだけフラットな映像を収録しておくと、撮影後の工程において、より効果的な画像の加工や編集が可能になる。Log 撮影は、この手法のわかりやすい例だ。
逆に、制作期間が短く長時間の作品であれば、撮影前に完成イメージをできるだけ作ったうえで撮影に臨めば、後処理は格段に少なくなり効率の良い制作が可能となる。後処理による映像加工の活用のためにも、機動力のある作品作りのためにも、ピクチャープロファイルを充分に活用して行こう。