アナログ時代の完成された静止画合成技法(実写合成)
コンピュータでPhotoshop等を使って画像処理が行われるずっと以前から、高度な特殊撮影テクニックとして、一部のプロの間で、通常では不可能な撮影技法がいろいろと工夫、研究されてきました
「実写合成」はその中でもかなり手の込んだ技術の一つです
こちらの写真(4 × 5 インチ判ポジ)は、1990 年頃に制作した「実写合成」の一例です
背景は北海道富良野で撮影したポジで、前景の商品は寸部のズレもなく合成されています
さらに瓶のガラス越しに背景が自然に溶け込み、実際にその場で(その風景の前で)撮影したとしか思えない仕上がりになっています
実はこれ、スタジオでビューカメラを使って一発どりで撮影されたものなのです
それでは当時の技術を振り返ってみましょう
この作品のモチーフは、おそらくその前年に大ヒットした映画“ ジュラシックパーク。1994 年版の年賀状に使用したものです
実写合成に必要なものは、背景素材用にあらかじめ撮影されたポジ、そして前景で合成したい商品です。さらにこちらは年賀状用に焼き込むためのリスフィルムを使いました。
完成予想図のスケッチに合わせ公園で撮影したものがこちらですが、25 年以上前のポジがほとんど退色もせずに残っていることも素晴らしいですね
合成する恐竜は周囲になにもない、中空な状態で撮影するために、しっぽを挟んで浮かせて固定します
第一露光では恐竜を黒く、周囲は真っ白にする必要があるので、このように乳白色のアクリルの裏からストロボを当てています
こちらが当時使っていた4×5カメラです
これが前面についているレンズですが、通常はこのようにシャッターチャージをしてからシャッターを切るようになっています。これだとどうしても微妙にカメラも動いてしまい、精密な合成写真ではズレてしまうので、シャッターのコッキングがレリーズと一緒に行えるプレスシャッターに改造したレンズを使います
第一露光
まず出来上がりの構図を想定しながら画角を決め、被写体の位置と大きさを合わせます
ルーペを当ててカメラの後ろ部分を前後に操作してピントを合わせます
実写合成のポイントとして、あらかじめ暗室で背景用ポジを未露光のフィルムに密着して装着します
白バックで恐竜のミニチュアを完全逆光状態で撮影。このままだと通常は当然このような状態に写る筈ですが、
あらかじめ撮影しておいた背景用ポジを重ねておくことでこのような状態で写ります
ミニチュアの恐竜部分だけが真っ黒なシルエット状態で、その他はポジフィルムの風景が正確に複写されました
このシルエットの部分は、写真的に「未露光」の状態ですから、このあと同じ位置で恐竜のみを露光できれば、正確に背景と合成された画像になります
ここが実写合成の“ 肝” になります
第二露光
カメラと被写体のミニチュアを動かさず、背景を黒バックに差し替えます
今度はライティングもミニュチアに光が当たる順光状態に変え、バックへの光の回り込みをカットして、背景が真っ暗になるよう撮影します
この第二露光だけだと、当然左写真の状態の筈ですが、第一露光でマスクされた未露光部分のみが露光されることになり、このような写真の状態になります
これで実写合成そのものは完成ですが、この後、用意しておいたリスフィルムの第三露光を加えたのがしたのがこちらの完成画像です
動画もご覧ください